ころころろ (単行本)
畠中 恵 (著）

単行本: 256ページ
出版社: 新潮社 (2009/7/30)
ISBN-10: 4104507105
ISBN-13: 978-4104507108
発売日： 2009/7/30
商品の寸法: 18.8 x 13.2 x 2.6 cm


「ねえ、熱も出しちゃいないし、目にほこりが入った訳でもないよ。なのにどうして、急に私の目は何も見えなくなったんだろう？」

　若だんなにすら分からぬ事に答えられる者は、長崎屋にはいなかった。

こんにちは、スタッフCです

今回は畠中恵さんの「ころころろ」をご紹介したいと思います。
しゃばけシリーズもこれで８作目。遅ればせながら追いつきました・・・。

毎度のことですが最初のページをめくって若だんなが死にかけていると「ああ、長崎屋はいつもどおり平和なんだなあ」と実感します。
シリーズものに「慣用句的表現」や「慣用句的状況」は付き物でありますが、しゃばけシリーズの場合は、死にかけの若だんなとそれを見守る妖たちがそれに価すると思います。
恒例の光景を確認しつつ読者はその作品世界に入っていくウォーミングアップをするのだと思います。

さて、本作では、ある日突然、若だんなの目が見えなくなってしまいます。
大事な跡取り息子の若だんながいよいよ大病を患ったらしいと、長崎屋も妖たちも大騒ぎ。

目が見えなくなった原因を考えていた若だんなはふと、先日長崎屋へやってきた珍しい客について思い出します。
客人は「藩の用で長崎屋に無理を聞いて貰いにきたのだ」と切り出します。
その「無理」とは、「長崎屋の大船を使わせてもらって大阪まで干物を送りたい」というものでした。
話を聞いていくうちに「前回は河童に食べられてしまい失敗した」ということなのですが・・・？

さて。
干物を食べる河童と若だんなの目。
これらがどう関係してくるのでしょうか。

手代の佐助は妻と暮らし始めるし、
仁吉は不本意ながら「子守り」をするハメに・・・。
若だんなの目に光を取り戻すことはできるのでしょうか？

はらはら。
どきどき。

ちょっぴりしんみりしてしまうラストも必見です。

「大丈夫です、我らはずっと、側におりますからね」
　仁吉がやけに確信を持った口調で言う。鳴家達が「うん」「はいはい」と言いつつ、眠たげな顔をして袖の内に入ってくる。

体は弱くても毎日のように寝込んでいても、いつも誰かの役に立ちたいと思い、勇気を持って行動することのできる若だんなだからこそ、こういう妖ハーレムが出来上がるのだろうな、と思います。

長崎屋の離れはいつでもみんなが仲良く賑やかな毎日であって欲しいな、と願います。