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こんにちは、「ながしょ」こと店長の長崎です。
熊本の本屋、熊本の書店として皆様に支えられて120周年を迎え、温故知新、人と本の幸せな出会いを演出していきます。
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2008年12月05日

詩集 エイプリル

詩集 エイプリル詩集 エイプリル

著者 銀色夏生
出版社 角川書店
出版年月 2008年6月
ISBN 978-4-04-167368-3
税込価格 580円
分類 文庫/日本文学



「励ます」

励ますってなんだろう
手を引いてどこかへ連れて行くことはできない
人は人を触ってはいけない
手を引いてついて来させることは
その人をますます弱くしてしまう
ひとりで歩けるように
離れて元気づけることだ
いちばん悲しい時に 強く抱きしめたあと
すぐに離れて待つことだ

できるのは
絶対に出口があるよと教えること
出口がないなんてことはないと
はったりでもいいから言い切ること
そして見守ること
信じると伝えること

(詩集 エイプリルより引用)

銀色夏生さんの詩は、物事をちょっと離れて見ているような、冷静で淡々としているところが魅力的だといつも感じます。
特に何も誇張していない、無駄な装飾もしていない、わかりにくい比喩もない、だから心にすとんと収まるものがなにかあるのでしょう。

冒頭にあげた詩は、あらゆる人間関係において当てはまる気がします。
一から十までを手助けしてあげていたら、もしくは、スタートからゴールまでのレールを引いてあげていたら、その人間関係は依存の関係になってしまうように私は思います。
その人の立ち上がろうとする力、前に進もうとする力、這い上がる際のもがく力、そういったものを奪いかねません。
優しさとはなんだろうか、と以前よく考えていて、まだ答えははっきりとは出ていませんが、何でもしてあげることは優しさではないとなんとなく漠然と思っています。
それは優しさではなく、何かをしてあげたということによって得られる優越感の一種ではないでしょうか。
だとしたらひどく傲慢で、当人は優しいことをしたのだと勘違いしているのだから同じこと繰り返すでしょう。
次第にこんなにしてあげているのに、と怒り出すかもしれません。
現在の社会にはこんな歪んだ優しさや愛情がそこら中にありふれているように思います。

大切な人であればあるほど、どうにかしてあげたいと思うかもしれません。
手を貸すのは簡単なことだし、優越感も得られます。
でもどうにかするのは本人です。
私たちはただ信じて見守るしかありません。
このつらいことにも出口はあるんだと力強く言い、信じて見守るだけです。
つらいことや苦しいことと闘って、這い上がってきた人は大きく成長できます。

もし、あなたも大切な人が何かに躓いていたら、信じて静かに見守りましょう。
それが大切な人へ出来る唯一の手助けです。





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この記事へのコメント

本当に、そうですよね。
手助けしてあげても、当人の為にはならないことのほうが多いような気がします。

息子が進路を決める時も、「なんて親!」って思ったかもしれない・・・

お母さんは、こう思うけどって話した後
最後は自分で決めなんたい。
自分の人生だから・・・自分が思うようにやりなさい。って言った。
息子は、投げやりな親と思ったかもしれないが
やっぱり、最後は自分ですよね。

人生これがいい、あれがいいと正解はないとおもう。

難しい問題です。
Posted by ひろごん at 2008年12月05日 20:39
本当にそのとおりですね。
深く考えさせられました。
自分は優しいと思い込んでいる人、きっとたくさんいますね。
私もその一人になってしまわないように、「見守る愛」を実践していきたいです。
「優しい人と思われたい」と思いながら誰かに優しくするとき、それは相手に見返りを期待している自分よがりの行為ですね。
反対にその人にわからなくてもいいから、その人のために何かしたいと思ったとき、それが本当の優しさなんだと思います。
ただ与えるということですね。
Posted by 眠兎 at 2008年12月05日 21:18
高校生のとき銀色夏生さんばかり読んでました。人気がありましたね~懐かしいな~
いつも子供と付き合う時に
「親が手を口を出さずに待つこと」の大切さ、「少し距離を置いてみる」
ことに気をつけています

つい親は子供が分かりやすいように、すぐ提案してしまう
でも大切なのは考える力をつけること
それには相手が大人でも子供でも、相手が考えて出す一言を待っている時間がとても必要だと思うんです
助けることはすぐできる、待つことは結構忍耐力がいるんですよね~
Posted by ゆっこゆっこ at 2008年12月05日 22:00
>ひろごんさん

コメントありがとうございます。
ひろごんさんのお気持ちは、きっと息子さんに伝わりますよ。すぐにはわからないかもしれないけれど、ある日、ああ、お母さんが言っていたのはこういうことだったのか、とわかる時がくると思います。
私の場合、その気持ちは祖母に感じたのですが。祖母は何事にもまるで干渉せずマイペースで、私が受験で一日中勉強していた時も、急に餅つきの手伝いをしろというような人で、子供の頃はすごく苦手だったのですが、そういう愛情もあるのだと大人になってから知り、大変素晴らしいばあちゃんだなと誇らしくなったのを覚えています。
ひろごんさんが、息子さんをしっかり見守ってあげることは、なにより息子さんの自信につながると思いますよ。これから一人で生きていくのを見守ってくれるのは親しかいません。親からの信頼はとても心強いと思います。
息子さんが、自分で決めた進路をしっかり歩まれていかれることをお祈りします。
Posted by ながしょ at 2008年12月05日 23:40
>眠兎さん

いつもありがとうございます。
優しさについて考える時は、つらい気持ちになります。歪んだ優しさをばら撒く人もいれば、歪んだ優しさの犠牲になっている人もたくさんいます。しかもそれは家族や友人、恋人同士など、閉鎖された空間、関係で生まれやすいものです。また、人の優しい気持ちを利用しようとする人だっています。歪んだ優しさを見てしまうたびに、優しいとはなんだろうかと考え、何年も考えていますが答えはわからないままです。時々まれに「優しいね」と言われても、私はなんだか喜べず寒々しい気分になってしまいます。
「見守る」という行為は、おそらく優しさの一つなのだと思います。苦しむ人を見て、じっと見守るのはその人が大切であればあるほど難しいですが、その人を信じるしかありませんね。でも、信じてもらっているということが、その人の大きな自信となることもあると思います。
どうか、「見守る愛」を正しい優しさを、眠兎さんの大切な人へ与えてくださいね。
Posted by ながしょ at 2008年12月06日 00:01
>ゆっこさん

コメントありがとうございます。
私も銀色夏生さんの本はもう10年くらい読んでいます。最近はエッセイが多いのですが、よく笑わせてもらっています。
近年は親子の問題もものすごく増えてきて、ニュースや話できくたびに悲しくなります。ゆっこさんのように気をつけていらっしゃるご家庭は、すごく安心だなと思います。私は、親になったことがないので子供の立場でしか言えないのですが。
考える力と、それから私が子供の内に身につけたかったなと思うのは、自分の考えを相手に面と向かって話す力ですね。自分の考えを話すことがうまくできなかったので。親に自分の考えを話す時は何回も頭の中でこんなことを言うんだとイメージし、やたらかしこまった雰囲気でやっとの思いで話していました。今となっては笑い話でしかないのですが、当時は自分の考えを話すことはすごく勇気の要ることでした。今でも苦手ですね~…。
相手がしっかり考えて出す答えを待つ時間はほんとうに大切です。親からしたら稚拙で甘くて救いようのない答えだとしても、子供は子供なりにしっかり考え出した答えなのですから、やはり見守っていくしかありませんね。
これからも、「親が手を口を出さずに待つこと」の大切さを忘れないでくださいね。
Posted by ながしょ at 2008年12月06日 00:35
子供と向き合うときも、セラピストとしてお客様と向き合うときも、常にその距離感は、気を付けるようにしてます。。


逆に、手を差し延べられても、最終的には自分自身でしっかり立たないと、歩けないって身を持って体感しているしですね・・・・・。
常にニュートラルであるって、意識していきたいです。。
Posted by LeeLee at 2008年12月06日 08:42
> Leeさん

コメントありがとうございます。
距離感、というのは人との関係を築く上でとても大切なものですね。また、人によって許せる距離感がまちまちなので、とても難しいものでもあります。大切なのは、相手の距離感を尊重することではないかなとも思います。
よくテンションが高い・低いと言いますが、ハイでもなくて平穏な状態のことをニュートラルというのでしょう。確か、よしもとばななの本で「ハイというのは必ずつけが回ってくるものだ。いまの状態を表すならニュートラルだ」というような文章が(もっと違った言い回しだと思います)ありました。セラピストの方が常にニュートラルであることを意識されていらっしゃると、お客様はおそらく安心感をとても強く感じられることと思います。人間の心の中はとても忙しなく動き回っているものだと思うので、そこに心の落ち着いた人が静かにいるだけでもすごく安心した気持ちになれますね。
これからも、ニュートラルであること、そして距離感の重要性を忘れずに、たくさんのお客様を癒していかれてくださいね。
Posted by ながしょ at 2008年12月06日 12:54
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