2008年11月24日
さらい屋五葉
「ただ、その者の持つ事情に己も介入し
分かち合いたいと思えるほどの友、仲間は、
きっと家族のような大切な存在
なのであろうと。」
(さらい屋五葉第二集より引用)

作者 オノ・ナツメ
出版社 小学館
出版年月 2006年7月〜
(2008年12月1日 第五集発売)
税込価格 630円
分類 コミック/マニア/IKKI COMIX
あらすじ
気弱で恥ずかしがり屋の性格が災いして浪人となってしまった政之助は、ある日偶然出会った遊び人風の男・弥一に用心棒になるよう依頼される。
しかし、政が守るべき弥一こそ、拐かしを生業とする賊「五葉」の一味であった。
剣の腕を見込まれ、仲間に誘われる政だが…!?
ひとクセもふたクセもある「五葉」の面々がそれぞれに抱える事情。
本当の絆とは、強さとは、優しさとは―――
オノ・ナツメが描き出す、大江戸艶色絵巻・開演!!
独特な画風と静かに淡々と流れるストーリー、まるで映画を観ているかのようなコマ割りと構図など、とても魅力的な漫画を描く漫画家、オノ・ナツメ。
「オノ・ナツメ」といえば「イタリア!!」と連想される方も少なくないでしょう。
確かにオノ・ナツメさん自身イタリアへの留学経験があり、漫画の中にも度々イタリア語やイタリアっぽい風景などが出てきます。
とてもお洒落な漫画ですが、しかし、オノ・ナツメワールドはそれだけではないのです。
この、さらい屋五葉はイタリアーノではなくジャッポーネ。
寧ろ、こっちのがいい。絶対いい!!と私イチオシでございます。
時代劇を観るのが割と好きだからなのか(全く詳しくはないが)、武士に憧れて剣道をやっていたからなのか、オノ・ナツメ作品の中ではこの「さらい屋五葉」が私は一番好きです。
よくある時代劇と異なるのは、勧善懲悪ではないことです。
簡単に言えば、お奉行様が桜吹雪(もしくは水戸の老人が印籠)をばばーんとご披露し、悪代官たちが「ははー」…というわけではないということですね。
賊の側から書いているのだからそれはそう、わかった話なのですが。
そういった時代劇の派手さといったものは、この作品にはありません。
誰もが一度はやってみたい華麗な立ち回りもありません(あれ、ほんとにやりたいです)。
その代わりに、静かに流れゆく人間模様がこころの隙間からじんわりと染み入ってきます。
こころが温まっていくような感覚すら覚えます。
この作品は、本当の絆、強さ、優しさのことが根本にあります。
冒頭で引用した政之助の言葉からは、人が抱える事情、心情について、関わりない人が口出し出来る事ではないとわかっているのだけれども、それでも関わって分かち合いたいと思える相手は大切な存在なのだということが窺えます。
それは、どんな事情であれしかと受け止めたいという強さであり、分かち合いたいという優しさであり、それが絆なのだなと私は思います。
私たちの誰もが、政であったり、弥一であったり、梅であったり、おたけさんであったり、松であったりするのです。
私たちの誰もが、いろいろな事情を抱えて毎日を必死に生き抜いていて、だからこそ愛おしい存在。
私は読み進める内にどんどん五葉を好きになっていく自分に気付きました。
絆は確実に深まっているのに、さらりとした関係は読んでいて心地良いものです。
絆が深まると、べたべたとならずにある程度の距離感で居られるのでしょう。
そこには信頼が生まれているはずだから。
こういったところは、オノ・ナツメ作品に共通しているところだと思います。
かなり余談で告知ですが、このさらい屋五葉、12月1日に第五集が発売となります。
来週の今日ですね。
そして本日は、オノ・ナツメの最新作「COPPERS」が発売です。
2週連続でオノ・ナツメの新刊が発売になるのはファンとしてはとても嬉しい事です。
コミックコーナー入ってすぐの場所にオノ・ナツメ作品をまとめてありますので、まだ読まれてない方、読んでみようかなーという方はぜひお立ち寄りくださいませ。
「オノ・ナツメ」といえば「イタリア!!」と連想される方も少なくないでしょう。
確かにオノ・ナツメさん自身イタリアへの留学経験があり、漫画の中にも度々イタリア語やイタリアっぽい風景などが出てきます。
とてもお洒落な漫画ですが、しかし、オノ・ナツメワールドはそれだけではないのです。
この、さらい屋五葉はイタリアーノではなくジャッポーネ。
寧ろ、こっちのがいい。絶対いい!!と私イチオシでございます。
時代劇を観るのが割と好きだからなのか(全く詳しくはないが)、武士に憧れて剣道をやっていたからなのか、オノ・ナツメ作品の中ではこの「さらい屋五葉」が私は一番好きです。
よくある時代劇と異なるのは、勧善懲悪ではないことです。
簡単に言えば、お奉行様が桜吹雪(もしくは水戸の老人が印籠)をばばーんとご披露し、悪代官たちが「ははー」…というわけではないということですね。
賊の側から書いているのだからそれはそう、わかった話なのですが。
そういった時代劇の派手さといったものは、この作品にはありません。
誰もが一度はやってみたい華麗な立ち回りもありません(あれ、ほんとにやりたいです)。
その代わりに、静かに流れゆく人間模様がこころの隙間からじんわりと染み入ってきます。
こころが温まっていくような感覚すら覚えます。
この作品は、本当の絆、強さ、優しさのことが根本にあります。
冒頭で引用した政之助の言葉からは、人が抱える事情、心情について、関わりない人が口出し出来る事ではないとわかっているのだけれども、それでも関わって分かち合いたいと思える相手は大切な存在なのだということが窺えます。
それは、どんな事情であれしかと受け止めたいという強さであり、分かち合いたいという優しさであり、それが絆なのだなと私は思います。
私たちの誰もが、政であったり、弥一であったり、梅であったり、おたけさんであったり、松であったりするのです。
私たちの誰もが、いろいろな事情を抱えて毎日を必死に生き抜いていて、だからこそ愛おしい存在。
私は読み進める内にどんどん五葉を好きになっていく自分に気付きました。
絆は確実に深まっているのに、さらりとした関係は読んでいて心地良いものです。
絆が深まると、べたべたとならずにある程度の距離感で居られるのでしょう。
そこには信頼が生まれているはずだから。
こういったところは、オノ・ナツメ作品に共通しているところだと思います。
かなり余談で告知ですが、このさらい屋五葉、12月1日に第五集が発売となります。
来週の今日ですね。
そして本日は、オノ・ナツメの最新作「COPPERS」が発売です。
2週連続でオノ・ナツメの新刊が発売になるのはファンとしてはとても嬉しい事です。
コミックコーナー入ってすぐの場所にオノ・ナツメ作品をまとめてありますので、まだ読まれてない方、読んでみようかなーという方はぜひお立ち寄りくださいませ。
この記事へのコメント
Posted by 眠兎 at 2008年11月24日 20:56
>眠兎さん
いつもありがとうございます。
やはり気になりますよね。私もオノ・ナツメさんの本を表紙だけ見て、すごく気になったので読み始めたのですよ。
オノ・ナツメさんの作品には、マンガ的な派手さやわくわく感、どんでん返しはないのですが、作品に流れる緩やかで優しい雰囲気がすごく魅力的です。うまくお伝えすることが出来ずもどかしいですが、もし機会があればお読みになられてくださいね。
書店員には、お客様に素敵な本と出会っていただくための紹介屋のような役割もあるのかなと思っています。私は書店員としてはまだまだ未熟なひょっこですが、少しでも多くのお客様に素敵な本と出会っていただけるように頑張ります。
いつもありがとうございます。
やはり気になりますよね。私もオノ・ナツメさんの本を表紙だけ見て、すごく気になったので読み始めたのですよ。
オノ・ナツメさんの作品には、マンガ的な派手さやわくわく感、どんでん返しはないのですが、作品に流れる緩やかで優しい雰囲気がすごく魅力的です。うまくお伝えすることが出来ずもどかしいですが、もし機会があればお読みになられてくださいね。
書店員には、お客様に素敵な本と出会っていただくための紹介屋のような役割もあるのかなと思っています。私は書店員としてはまだまだ未熟なひょっこですが、少しでも多くのお客様に素敵な本と出会っていただけるように頑張ります。
Posted by ながしょ at 2008年11月24日 23:32
オノ・ナツメさんといえばあの独特のタッチの絵(外国の絵本かポスターに出てきそうな…)が思い出されるので、時代劇を描いていらっしゃるのは意外でした。私は「リストランテ・パラディーゾ」は読んだことがあるのですが、「さらい屋五葉」もあの作品と同じように、根底には、人と人との絆や優しさというテーマがあるのですね。俄然読みたくなりました!オノ・ナツメさんの描く不器用な人間は色気があるな。そこがいい。
Posted by ニャンコ老師 at 2008年11月25日 00:47
>ニャンコ老師さん
コメントありがとうございます。
イタリアの老眼鏡紳士もすばらしく素敵でしたが、オノ・ナツメ時代劇もすごーく良いですよ。イチオシしております。
野暮なことはしないのが当たり前という風潮で、「リストランテ・パラディーゾ」よりもかなり不器用でわかりにくい絆や優しさなのですが、それが江戸前なのかなと思います。素っ気ない感じが素敵です。
田舎から来た江戸詰めの政之助という浪人が出てきますが、政之助はまだまだ江戸に染まりきっておらず、しかも侍らしくないので、話のアクセントになっています。
そして、オノ・ナツメさん描く色気も、和の雰囲気でたっぷりと醸し出されていますので、もし機会がありましたらお読みになられてくださいね。
コメントありがとうございます。
イタリアの老眼鏡紳士もすばらしく素敵でしたが、オノ・ナツメ時代劇もすごーく良いですよ。イチオシしております。
野暮なことはしないのが当たり前という風潮で、「リストランテ・パラディーゾ」よりもかなり不器用でわかりにくい絆や優しさなのですが、それが江戸前なのかなと思います。素っ気ない感じが素敵です。
田舎から来た江戸詰めの政之助という浪人が出てきますが、政之助はまだまだ江戸に染まりきっておらず、しかも侍らしくないので、話のアクセントになっています。
そして、オノ・ナツメさん描く色気も、和の雰囲気でたっぷりと醸し出されていますので、もし機会がありましたらお読みになられてくださいね。
Posted by ながしょ at 2008年11月25日 13:12
これだけ人気があるのは絵だけではなく、作品全体を通した魅力が何かあるからなんでしょうね。
機会があったら、ぜひ読んでみたいです。
いつも素敵な本との出会いを演出していただきありがとうございます。