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こんにちは、「ながしょ」こと店長の長崎です。
熊本の本屋、熊本の書店として皆様に支えられて120周年を迎え、温故知新、人と本の幸せな出会いを演出していきます。
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2008年10月29日

シグナルとシグナレス

「さあ一緒に祈りましょう。」
「ええ。」
「あわれみふかいサンタマリヤ、すきとおるよるの底、冷たい雪の地面の上にかなしくいのるわたくしどもをみそなわせ、めぐみふかいジョウジスチブソンさま、あなたのしもべのまたしもべ、かなしいこのたましいのまことの祈りをみそなわせ、ああ、サンタマリヤ。」
「ああ。」

星はしずかにめぐって行きました。そこであの赤眼のさそりが、せわしなくまたたいて東から出て来そしてサンタマリヤのお月さまが慈愛に満ちた尊い黄金のまなざしに、じっと二人を見ながら、西のまっくろの山におはいりになったとき、シグナルとシグナレスの二人は、いのりにつかれてもう睡って居ました。
(新編 銀河鉄道の夜 シグナルとシグナレス P100-P101より引用)

ちょっとだけ解説を。
シグナルとシグナレスは、当時の岩手軽便鉄道のシグナル柱です。
わかりやすくいうと、電車用の信号機でしょう。
最新式の立派なシグナル柱で、少し気が短くおっちょこちょいな若者シグナルと、木で出来た旧式のシグナル柱で、気弱で健気だが芯の強いところもあるシグナレス。
「シグナルとシグナレス」は簡単に言ってしまえば、この二人(二機)の美しく可憐で切ない恋物語なのです。

恋物語。
私は恋愛が中心の話というのは苦手なのです。
しかし、どうしたことかこの「シグナルとシグナレス」はすごく好きになってしまいました。
文章がとても美しいのです。

びろうどの夜の闇に浮かぶ信号の明滅、夜空で瞬く赤眼のさそり、サンタマリヤのお月さま、シグナレスがたびたび見上げる昼間の雲の流れ。
それらの美しい描写が、読者をぐいぐい宮沢賢治の世界に引き込みます。
脳裏には岩手軽便鉄道の代わりに、読者が良く知る某駅(田舎の駅だと尚良い)が浮かび、そこにはシグナルとシグナレスが切ない小さなため息をつきながら存在しているような気がしてきます。

田舎の夜の駅を利用することがあったなら、その静寂に耳をそっと澄ませてみてください。
シグナルとシグナレスの祈りが聞こえてくるかもしれませんね。

シグナルとシグナレス

新編 銀河鉄道の夜 より
シグナルとシグナレス
著者 宮沢賢治
出版社 新潮社
ISBN 978-4-10-109205-8
税込価格 420円



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この記事へのコメント

『星の王子様』
『銀河鉄道の夜』
どちらも
大~~~~好きです^^V
Posted by sinamonsinamon at 2008年10月29日 11:45
銀河鉄道の夜は、子供のころに読んだことがあります。めくるめく世界観に、とても不思議な感覚を感じました。
宮沢賢治は心の中の心象風景を切り取る達人だったのかもしれませんね。
Posted by 眠兎 at 2008年10月29日 16:16
>sinamonさん
コメントありがとうございます。
銀河鉄道の夜も、とても好きな話です。
シグナルとシグナレスも機会があったらぜひ読んでみてくださいね。
Posted by ながしょ at 2008年10月29日 23:57
>眠兎さん
コメントありがとうございます。
銀河鉄道の夜は、19歳の頃初めて読みました。
もっと早い時期に読んでいたかった…と悔やんだので、子供の頃に読まれていた眠兎さんがうらやましいです。
心象風景を切り取る達人…。
まさにそうですね!!
Posted by ながしょ at 2008年10月30日 00:01
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