熊本在住・坂口恭平さんの新作は、二十歳過ぎ頃の記憶が雛形になっているようです。昨年発表され、作風の大転換点ともなった『現実宿り』以降の、緊張度・緊密度の高い表現が引き継がれつつも和らいだ今作では、通称「シミ」という人物をはじめとするとても風変わりな8人の仲間たちとの日々？が描かれたいわば「青春小説」になっており、格段に読みやすさが戻って参りました。過去の作品の文庫化なども含めると、ここ7カ月ほどほぼ毎月何かしらの新刊が出ており、絵や音楽の方面でもあい変わらず活躍中ご様子、さらには次回作「ふなねずみ」も着実に完成に向かっているとの情報もあります。みなさんでぜひ応援いたしましょう。
しみ／坂口恭平／毎日新聞出版／1512円（税込）