気になる新刊
こんにちは、スタッフの児玉です。気になる新刊をご紹介します。
東日本大震災をきっかけに、現在熊本に拠点を移して活動している岡田利規さんの新刊が出ました。岡田さんは97年に演劇カンパニー・チェルフィッチュを立ち上げ、作家としては2004年に『三月の5日間』で岸田國士戯曲賞を受賞、2007年に刊行した初の小説集『わたしたちに許された特別な時間の終わり』で大江健三郎賞を受賞しています。
本書は最新作『現在地』から過去の作品へとタイトル通り遡って、岡田さんが過去に書いた文章も交えながら、ご自身の試行の遍歴をたどっていく内容になっています。演劇論なのですが、演劇に(文学に、芸術に)ほんのわずかでも興味のある方ならばとてもおもしろく読めるでしょうし、そもそもあらゆる方にとって無縁な本ではありません。
アートという言葉の語源を遡ると「技術」とか「人口の」などといった意味が含まれていたことをご存知でしょうか?人の仕事に関わるものとしてこの言葉はあったのであり、つまり芸術家と呼ばれている人にだけ関わる言葉ではなかったのです。
先にも書きましたように本書は、岡田さんが芸術を通した人や社会との関わりの中で、自らがどんな変化をしてきたか時間を遡って書いている本です。帯にはあとがきからの抜粋文が書かれていますが、「社会が芸術に対して、機能や効果を持つようにと厳しく要請するようになってきているのを、そしてその要請が日を追って厳しさをましているのを、僕はひしひしと感じる。」とあります。いかがでしょうか、芸術=仕事で読むと頷いてしまうのではないでしょうか?
芸術家の思考に触れ、私達自身に引き付けて一緒に考える、きっと刺激にみちた読書となります。
遡行 変形していくための演劇論/岡田利規/河出書房新社/1995円
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