気になる新刊
こんにちは、スタッフの児玉です。新刊を4冊ご紹介します。
奇抜さで右に出る者はいないのではないかと思えるほど言葉で遊びに遊んだ人、レーモン・クノーの新しい翻訳本が出ました。「地下鉄のザジ」や「文体練習」を読んで、そのユニークさに触れたことのある方はたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。本書はエッセイ集ですが、ページをパラパラめくるだけでも、謎めいた図版や記号を織り交ぜて書かれた奇妙な本であることがうかがえます。表題に施された「翻訳」だけ見ても思いますが、日本語に移し替えるのは大変だったんではないでしょうか。一度読んだら病みつきになるクノー文学をご堪能ください。
棒・数字・文字/レーモン・クノー著 宮川明子訳/月曜社/2940円
言葉と言えば、昔の日本人の、季節や風物へ向けられた細やかな感性は、風をも名付け呼び分けていたのだから恐れ入ります。著者の榎本好宏さんは俳人です。本書は風にまつわるさまざまな言葉やその語源、言い伝えや風習などを紹介し、論じたエッセイ集となっています。この本がきっかけとなって、今までならただ吹かれるままに流していた風に気づくようになるかもしれないし、新しい風を見つけることだってあるかもしれません。風が「見える」ようになる本です。もちろん俳句も読めます。
風の名前/榎本好宏/白水社/2310円
東浩紀さんが編集長を務める思想地図βの3号目『日本2.0』が発売されました。巻頭言において東さんは、時代が混迷をきわめるいま必要なのは改革のための具体的なプログラムだとの非難があるだろうけれども、逆にこのような時代だからこそ抽象的な理念をめぐる土台整備としての「日本の新しいイメージ」の探究を試みる、と言っています。前2号よりも分厚く仕上がった今号の注目点の一つは、国民すべてのものである憲法を未来に向かって新たに考えてみようという新憲法草案企画。国のかたちをめぐる議論の硬直を揺るがすひとつのきっかけたらんとする大胆な提言集。
日本2.0 思想地図β vol.3/東浩紀ほか/ゲンロン/3360円
当店で最近よく売れている本の1冊、洋画家・松本竣介(しゅんすけ)の画文集です。生誕100年記念で出版されました。青と茶を基調とした都市風景画を多く描いた画家で、本書にも本人の言葉と共にたくさん収録されていますが、絵そのものから非常に文学的な印象を受けますし、言葉もとても良いのです。中公文庫でも「青い絵具の匂い 松本竣介と私/中野淳」の改版が新たに出たばかりで、こちらは近日入荷予定ですので、ぜひあわせてお楽しみください。
松本竣介 線と言葉/平凡社コロナ・ブックス/1680円
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