中原中也詩集

ながしょ

2010年12月23日 12:08


新潮文庫
中原中也/〔著〕 吉田 生/編


出版社名 新潮社
出版年月 2000年4月
ISBNコード 978-4-10-129021-8
(4-10-129021-0)
税込価格 500円



こんにちは、スタッフのKです。

この時期にぴったりの詩を紹介します。

   除夜の鐘
 
 除夜の鐘は暗い遠いい空で鳴る。
 千万年も、古びた夜(よる)の空気を顫(ふる)はし、
 除夜の鐘は暗い遠いい空で鳴る。

 それは寺院の森の霧つた空……
 そのあたりで鳴つて、そしてそこから響いて来る。
 それは寺院の森の霧つた空……

 その時子供は父母の膝下(ひざもと)で蕎麦を食うべ、
 その時銀座はいつぱいの人出、浅草もいつぱいの人出、
 その時子供は父母の膝下で蕎麦を食うべ。

 その時銀座はいつぱいの人出、浅草もいつぱいの人出。
 その時囚人は、どんな心持だらう、どんな心持だらう、
 その時銀座はいつぱいの人出、浅草もいつぱいの人出。

 除夜の鐘は暗い遠いい空で鳴る。
 千万年も、古びた夜の空気を顫はし、
 除夜の鐘は暗い遠いい空で鳴る。



「遠いい」なんて言い回しが
中也らしい詩です。

中也の詩には、
遠くに何かを感じ取ったような表現がよく見られますが
除夜の鐘では、時間的な遠さまで感じる鐘の音を聴いています。

繰り返されることばの中、第四連に出てくる
 その時囚人は、どんな心持だらう、どんな心持だらう、
という一行が目立っていますが、
囚人とその心持ちにまで思いを馳せるわけは何でしょうか?


静けさを感じる詩です。
年末から年始を
心静かに過ごせると思います。
詩集「在りし日の歌」の中の一篇です。
もちろん「中原中也詩集(新潮文庫)」にも収録されています。
他にも各季節の詩がたくさんあります。
ぜひ読んでみて下さい。



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