凍りのくじら
講談社文庫 つ28-5
辻村深月/〔著〕
出版社名 講談社
出版年月 2008年11月
ISBNコード 978-4-06-276200-7
(4-06-276200-5)
税込価格 820円
頁数・縦 568P 15cm
『テキオー灯』。
二十二世紀でも、まだ最新の発明なんだ。海底でも、宇宙でも、どんな場所であっても、この光を浴びたら、そこで生きていける。息苦しさを感じることなく、そこを自分の場所として捉え、呼吸ができるよ。君はもう、少し・不在なんかじゃなくなる。
はじめまして、こんにちは。スタッフのCです
今回は私が最近よく読んでいる作家・辻村深月さんの作品から「凍りのくじら」を紹介させていただきたいと思います。(辻村作品で最初に読んだ記念すべき一冊です。これでファンになりました)。
作品『ドラえもん』でおなじみの藤子・F・不二雄先生を尊敬している主人公の理帆子は、自分の身の回りの人間に「スコシ・ナントカ」と名づける癖があります。
例えば、友人の美也ちゃんは「少し・フリー」、自分の母のことは「少し・不幸」。
そして自分のことは「少し・不在」というように。
彼女は屈託なくどこのグループの輪にも溶け込めて、愛想よく馬鹿のふりをしながらも、場の当事者になることが絶対になく、どこにいてもそこを自分の居場所だと思えず息苦しく感じています。
この物語はそんな彼女が、家族・友人・恋人、あるいは夏の図書館で出会った謎の青年、など、自分を取り巻く多くの人々と関わり合う中で「少し・不在」から脱出するまでの成長を描いた物語です。
・・・などと書くと「ありきたりな少女の成長譚か」などと誤解されそうで(?)怖いのですが、その心配は全くありません。
冒頭にも紹介文を掲載させていただきましたが、ラストで理帆子が「テキオー灯」の光を受けるシーン、そして、最後に訪れるドンデン返しに「えっ、あの人物の正体って・・・あー、そうだったのか!」と驚かされること必至でございます。
あまり書くとネタバレになってしまいますのでこのへんにしておこうと思います。
生きていれば誰しもどこかで息苦しさを感じることがあると思いますが、この本を読んで少しでも「人間っていいな」と感じていただけたら幸いです。
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