残光
小島信夫/著
出版社名 新潮社
出版年月 2009年11月
ISBNコード 978-4-10-114502-0
(4-10-114502-4)
税込価格 460円
今思うと、
すべて楽しいときであったことなのに書き置かないということは、
誰に対してということなく申しわけないことだ……。
こんにちは、スタッフのk.kです。
今回ご紹介するのはこちらです。
これは2006年に惜しくも亡くなられた作家、小島信夫の遺作です。
これを書いているとき、小島氏90歳。
享年91ですから、そのバイタリティは想像を絶します。
さて本書ですが、どう紹介すればいいのか、
自分で選んでおきながら、非常にこまっています。
ストーリーは、ない、と言っていいと思います。
一見私小説のようですが、
過去に書いた小説の引用が延々つづいたり、
登場人物がいつのまにか入れ替わっていたり、
かと思えば、
とつぜん現在の小島さんが語り始めたり。
混乱しそうなのですが、
ギリギリのところで読み続けられるのは、
小島氏がすべてを「わざと」やっている、という
統率があるからではないでしょうか。
しかも、ときにふっと
信じられないくらいの美文に出会ったりして、
『これを書いてる小島信夫の脳内はどうなってんだ!!』
と思うことしきり、でした。
特に、
小島氏が軽井沢の別荘から浅間山へ向けて奥さんとふたり上っていく場面は、
あまりの美文さにちょっと恐ろしい気すらしました。
さかのぼって昔の作品も読んでみたいと思います。
小説を読むという行為の、なんというか、
贅沢さ、みたいなものを感じた一冊です。
読書って、ほんっとーうに、素晴らしいですね?
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