こうちゃん

ながしょ

2009年10月15日 00:00



須賀敦子/文 酒井駒子/画


出版社名 河出書房新社
出版年月 2004年3月
ISBNコード 978-4-309-01621-4
(4-309-01621-9)
税込価格 1,680円
頁数・縦 79P 21cm




こんにちは、スタッフのk.kです。
今回紹介する本はこちらです。
絵本作家である酒井駒子さんのこの装画で、目にしたことがある方も多いのではないでしょうか。
『Pooka』や『MOE』で特集が組まれたり、他の方の本でも表紙を多く手がけていたりと大活躍の酒井駒子さんですが、こちらの本でも表紙と挿画を描かれています。
とてもセンチメンタルで、どこかノスタルジックで、かつ非常にエモーショナルな外見のこの本のオススメはしかし、なんといっても須賀敦子さんの文章です。
やや長いですが、一文を引用してみます。


こうちゃん、それでも わたしたちは まだ ちからを出して 地にひざまずき、あかるくもえる炎の小花をつまねばならぬのではないだろうかと、あの濡れた 霧のよあけ、泣きじゃくるあなたのあたたかさを身にかんじながら、私には、はっきりと そう思えたのでした。


わたしたちは
「まだ ちからを出して」、
「地にひざまず」いて、
「あかるくもえる炎の小花を」つまねばならない……

私ははじめてここを読んだとき、するどく胸にせまるものを感じたのと同時に、著者である須賀敦子さんの「言葉に対する真摯さ」を見せられたような気がして、なんというか、背筋がピン! と伸びる思いがしました。

そのシビアで、だからこそ説得力のある須賀さんの言葉と、酒井さんの独特な雰囲気の絵とが、まさにベストマッチなすばらしい本ではないかと思います。

物語の内容は、絵本と紹介できるほど正直な所とおりのいいものではありません。
大人の絵本、といった感じでしょうか。

秋の夜長に、静かな文章にしんしんと浸ってみるのもオツなものかもしれません。


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