蒲公英草紙

ながしょ

2009年08月03日 03:34

文庫お  48― 5
恩田陸/著 

出版社名 (株)集  英  社
出版年月 2008年5月
ISBNコード(13桁) 978-4-08-746294-4
ISBNコード(10桁) 4-08-746294-3

税込価格 500円




 いつの世も、新しいものは船の漕ぎだす海原に似ているように思います。
 新しい、という言葉にいつも人々は何を求めているのでしょうか。
こんにちは、スタッフのKです。

前回ご紹介した「光の帝国」とおなじ ”常野(トコノ)物語”です。
こちらは一つのお話になっていて、一気に読んでしまいました。


時は二十世紀初頭、東北の農村が舞台です。
槙村(マキムラ)家の人々が何代にもわたって守り続けてきた小さな集落。
その集落に不思議な能力を持つ一家が訪れます。

峰子は槙村家の末娘である聡子様のお話相手としてお屋敷を訪れるようになり、槙村家の人々、そして不思議な雰囲気を持つ春田一家と親しくなっていきます。
平和で優しさに満ちた暮らし。
しかし、二十世紀という大きなうねりが人々をのみこんでいきます。


 自分が幸せであった時期は、その時には分かりません。こうして振り返ってみて初めて、ああ、あの時がそうだったのだと気付くものです。人生は夥しい石ころを拾い、背負っていくようなものです。数え切れぬほど多くの季節を経たあとで、疲れた手で籠を降ろし、これまでに拾った石ころを掘り起こしていると、拾った石ころのうちの幾つかが小さな宝石のように輝いているのを発見するのです。そしてあの幾つかの季節、あのお屋敷で過ごした季節が私にとってその宝石だったのです。



ご紹介した「蒲公英草紙」、「光の帝国」は、集英社の夏の一冊(ナツイチ)にもなっています。
この夏、あなたも常野のふしぎな人々の魅力に触れてみませんか。


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