おじいさんのハーモニカ
「おじいさんのハーモニカ」
ヘレン・V・グリフィス/作
ジェイムズ・スティーブンソン/絵
今村葦子/訳
あすなろ書房
税込価格1,365円
こんにちは。スタッフのSです。
人を生かしているものって、何なのでしょう?
水、空気、食べ物は、もちろん必要ですね。
趣味や仕事や家族があるから、自分は「生きていける」、もしくは、それがあるから「生きなくてはならない」という答えもあるかもしれません。今あるものではなくても、思い出を支えに生きている人も、いるかもしれません。
「おじいさんのハーモニカ」は、そんなことを考えさせる一冊です。
とある夏。
ジョージア州のおじいさんの家に、女の子が預けられることになりました。
女の子は、おじいさんの孫娘です。
列車が通りすぎるとふるえるほど、小さな家。
そこで女の子は、おじいさんの畑仕事を手伝いました。
木かげでお昼ごはんを食べた後は、二人で草の上に寝ころがって休みました。
耳をすますと聞こえる、木の葉のふれあう音。虫の声。ものまね鳥の歌。
夕方になると、おじいさんはハーモニカを吹きました。
女の子はおじいさんのハーモニカの音を、大事な大事な思い出にして、来年もおじいさんの家に来ることを約束し、自分の家に帰っていきました。
しかし、約束は守られませんでした。
病気になったおじいさんが、女の子の住む都会の街に来ることになったからです。
ジョージアの小さな家とひきかえに、おじいさんは、あのハーモニカのしらべを失ってしまいました。
しかし…
失われた音楽を取り戻したのは、二人で過ごした夏の思い出だったのです。
おじいさんにまた笑ってほしいという女の子の気持ちを、作者は素直に描いています。こういうお話の、ややもすればお説教くさくなったり、お涙頂戴ものになってしまいそうなところをさらりと書けるのはすごいことです。
作者のグリフィスの身近に、ハーモニカの吹けるすてきなおじいさんがいたのかな。
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