詩の玉手箱

ながしょ

2009年05月01日 09:00

「詩の玉手箱」
三木卓/編・解説
柚木沙弥郎/絵
いそっぷ社
税込価格1680円









こんにちは、スタッフのSです。
これは名詩集です。
柚木沙弥郎さんが描く、にじんだような空の色が好きです。
4月から3月までの春夏秋冬に合った詩を、各月4~5編ずつ織り込んであります。
ブレイクの、光あふれる詩。
高村光太郎の、妻を見つめた詩。
中原中也、石垣りん、シェークスピアなど、有名な詩人の名がずらりと並んでいますが、そのどれもが、人を引き寄せる言葉の力のある詩ばかりです。

堀口大学の「母の声」という詩が、胸に沁みこんで離れません。

「母の声」

母よ、
僕は尋ねる、
耳の奥に残るあなたの声を、
あなたが世に在られた最後の日、
幼い僕を呼ばれたであろうその最後の声を。

三半規管よ、
耳の奥に住む巻貝よ、
母のいまわの、その声を返せ。


三半規管は、耳の奥にぐるぐる渦を巻いているあれです。

三木卓さんの解説によると、堀口大学は幼い頃に母を失っています。自分の名を呼んだ母の声が耳の奥に残っていないだろうか。ただ一言、自分を呼ぶ母の声が聴きたいと願う、母を恋う詩なのだそうです。この解説のおかげで、いっそう詩をかみしめて味わうことができます。
どう読めばいいのか分からない、どこがおもしろいのか分からないと詩を敬遠している方は、ぜひ一度「詩の玉手箱」を読んでみてください。

関連記事