町長選挙

ながしょ

2009年04月20日 10:00


町長選挙

著者 奥田英朗
出版社名 文芸春秋
出版年月 2009年3月
ISBN 978-4-16-771103-0
税込価格 530円
分類 文庫/日本文学/文春文庫






[要旨]
町営の診療所しかない都下の離れ小島に赴任することになった、トンデモ精神科医の伊良部。そこは住民の勢力を二分する町長選挙の真っ最中で、なんとか伊良部を自陣営に取り込もうとする住民たちの攻勢に、さすがの伊良部も圧倒されて…なんと引きこもりに!?泣く子も黙る伊良部の暴走が止まらない、絶好調シリーズ第3弾。
こんにちは。
スタッフのNです。

イン・ザ・プール、空中ブランコに引き続き、第3弾目の町長選挙も文庫化しました。
奥田秀朗といえば、トンデモ精神科医伊良部先生シリーズといってもいいでしょう。
読んだことない方も、以前ドラマで阿部寛が主演でやっていた…といえばおわかりの方もいらっしゃるかもしれません。
残念ながらドラマは見ていないのですが。
私も、このシリーズはサウスバウンドの次に大好きで、文庫コーナーで見かけたとき思わずにやりとしてしまいました。

さて、このシリーズの主人公である精神科医の伊良部ですが伊良部総合病院の息子である彼は、メタボ体型の見た目は40歳くらいで、注射フェチ、言動はとても医者には(というかいい大人には)見えないような人物です。
ちなみにドラマしか見たことがないという方は、阿部寛のイメージを潔く捨て去ってください。
そして彼の助手的役割である看護婦のまゆみも、看護婦らしからぬ人物です。
この世間一般のイメージからかけ離れているトンデモナイところが、物語をテンポよく違和感なく進めているような気がします。

この精神科にやってくるのは、お金持ちもいれば女優もいるし、公務員もいます。
彼らの病的な行動には吹き出してしまうようなところもあるんだけれど、きっとどきりとする人も多いはず。
そのくらいありふれた行動なのですがそのありふれた行動ゆえに、読者は「私たちもちょっと深みへはまってしまうとこんな風になってしまうのかも…」などと妙にリアルな不安を感じてしまいます。
「ああ、精神科のドアをノックしてみないといけないかしら…」なんて、心配性の方は感じることでしょう。

でも、忘れてはいけません。
ここは伊良部総合病院精神科なのです。
かの有名な「トンデモ精神科医」がいるのです。
きっとあなたが精神科のドアをノックすれば、「いらっしゃーい」と呑気な声が聞こえ、わけもわからずブドウ糖注射をされ、伊良部先生の常識外れっぷりに呆れ返ることでしょう。
その診察ぶりに、腹を立ててしまう方もいるかもしれません。
しかしあなたは、病的な行動に真面目に苦しむ内に、伊良部先生の一見いい加減なアドバイスを思い出し、ひょんなことで楽になってしまうのです。
伊良部先生のあまりの適当さ、自由奔放さ、常識はずれっぷりに、いろんなことがいい意味でどうでもよくなってきて、「なに真面目にやっているんだ」と馬鹿らしくなってきます。

そう、これが伊良部効果なのです。

読んだ後は気分晴れやか♪

あなたも、伊良部総合病院精神科のドアをノックしてみませんか?




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