安房直子 十七の物語 夢の果て
「安房直子 十七の物語 夢の果て」
文・安房直子
絵・味戸ケイコ
瑞雲舎
税込価格2,100円
こんにちは。スタッフのSです。
今日は、私の本棚の宝物になっている本をご紹介します。
1974年の春から、1986年の冬まで…
約10年間にわたって、月刊「詩とメルヘン」に掲載された十七の物語が収録されています。
文章自体がひとつの風景画のような、ひとつの絵がとある物語のような、見事に文章と絵が一致した作品です。
しばらく歩いて行くうちに、娘は、あたりが、なんだかなつかしい風景に変わって行くのに気づきました。それはちょうど、額縁の中の、見おぼえのある風景画の中へ入っていくような感じでした。
畑の終わったそのあたりから、青い花畑が続いていたのです。
みわたすかぎり、アイリスの……
(夢の中とおんなじだわ)
娘は、思わずかけ出しました。フレアースカートが、風にひろがりました。その風に押されながら、青い花をかきわけかきわけ、花が終わるまで走ったのです。
(『夢の果て』より抜粋)
表題作の「夢の果て」は、不思議な青いアイシャドウを手に入れた少女の物語です。
そのアイシャドウをまぶたに刷くと、少女は毎晩必ず同じ夢を見るのです。少女は夜毎、果ての見えない花畑の終わりをめざして、走り続けました。夢の果てからきこえてくる音楽の正体を確かめるために…
安房直子さんの書く色の表現がとても綺麗だな、と思います。それも、現実で目にできる色ではなくて、夢の中でしか表せないような色を文章から想像します。目を閉じて思い浮かべる青い色、のようなものです。
夢を見ていても、いつも途中で目が覚めてしまいますが、夢の果てがあるならどんなところでしょうか。最果てを見てしまったら戻れなくなりそうで、なんだか怖いですね。
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