二十億光年の孤独

ながしょ

2009年03月02日 23:59

十八才

ある夜
僕は まったく ひとりだった

想ひ出をわすれ
本棚と 雲に飽き
おさない いかりと かなしみと
僕は にがく 味はった

雨のふる夜
僕は ほんとに ひとりだった



二十億光年の孤独
著者 谷川俊太郎
出版社 集英社
出版年月 2008年2月
ISBN 978-4-08-746268-5
税込価格 500円
分類 文庫/日本文学




こんにちは。
スタッフのNです。

この詩集に収録されているのは、谷川俊太郎氏が18歳のときに書いた詩の数々です。

解説を読みびっくりしたのは、谷川氏が、集団の中で学ぶのに懲りてモラトリアムを放棄した、自立したいと強く願う、孤独で人づきあいの悪い、親のスネをかじるしかない少年だったということです。
私と重なる部分があって、だからこの詩集が谷川氏の作品の中では一番好きかもしれません。

人は誰しも孤独であり、かなしみは世界に空気のように溶け込んでいます。
そのことに多くの人がはじめて気づくのは、10代の頃でしょう。
子供でも大人でもない宙ぶらりんの不思議で未熟な年頃は、宇宙に近い存在なのかもしれません。
はじめて感じる絶対的な孤独に為すすべもなく、おさないいかりとかなしみとを他人に自分自身にぶつけ、ぶつけてもどうにもならず、行き場を失い、宙を漂うだけ。
空しさだけが残り、それすらも苦々しく貪欲に味わうのです。

何かものすごい力に満ち溢れた、その貪欲な時期は、人生においてなくてはならない重要な時期なのでしょう。

18歳の頃、この詩集に出会いたかった、とものすごく感じました。

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