3月のライオン

ながしょ

2008年12月16日 18:30

「おいで」と言ってもらえた場所が
できただけで……

そのコトバだけで

うれしくておなかがいっぱいで

もう 充分な気がした


3月のライオン
著者 羽海野 チカ
出版社名 白泉社
出版年月 2008年2月〜
ISBN 978-4-592-14511-0
税込価格 490円〜
分類 コミック/青年(一般)/ジェッツコミックス





[簡単なあらすじ]
主人公は、東京の下町に一人で暮らす、17歳のプロの将棋の棋士=桐山零。
しかし、彼は幼い頃、事故で家族を失い、深い孤独を抱えた少年だった。
そんな彼の前に現れたのは、あかり・ひなた・モモの3姉妹。
彼女たちと接するうちに零は…。
様々な人間が、何かを取り戻していく優しい物語。
こんにちは。
スタッフのNです。

羽海野チカといえば、「全員片想い」のハチミツとクローバーで一躍有名になった大人気マンガ家。
少女マンガは滅多に読まないのですが、ハチクロはいつか読んでみたいのです。
アニメがあっていたのをチラッと見かけて、スネオヘアーの主題歌とスピッツの挿入歌が好きな曲ばかりで、しかもすごくいい使われ方をしていて「うわぁ…DVD借りてこようかな…」と思ってしまいました。
また、主人公たちの心理描写がすごくて、その上であの曲が流れるともう、切なさ最高潮です。

そんな羽海野チカの最新作は雰囲気ががらりと変わります。
タイトルをみただけでは何のマンガなのか全く予想出来ません…。
幼い頃家族を失い、心に深い傷を負った17歳、プロ棋士の主人公・桐山零の物語。
とにかく丁寧な感情の描写と、表情豊かな登場人物にぐいぐい引き込まれます。

幼い頃から抱えてきた心の傷を癒すことも忘れることも出来ないまま今を生きる少年。
どんなに楽しそうにしてもふとしたことでつらいことを思い出してしまう彼は、3姉妹と出会い、あたたかい居場所を見つけます。
3姉妹の長女あかりは、川本家の大黒柱で同じく両親のいない彼をあたたかく見守り、次女のひなたは、いつも明るくてすごくがんばりやさんですが、お盆の送り火の夜に一人で泣き、三女のモモはみんなに愛されていて、零のことがだいすき。
川本家のじいちゃんや川本家の猫、棋士仲間も出てきて、物語はゆっくりと流れる川のように進んでゆきます。
青年コミックスですが、男性にも女性にも読みやすいと思います。

冒頭で引用した言葉が、すごく印象的で共感しました。
居場所がない思いをしているときにそんな言葉をかけられて、すごく嬉しくて。
居場所というのは、ほっとできる場所だと私は思います。
それがないというのは、ほんとうに辛いことであり、常に緊張状態で生きなければなりません。
家族を失った幼い頃から、ずっと緊張状態で生きてきた彼だからこそ、コトバだけで充分と思ったのでしょう。

まだ私は1巻しか読んでいませんが(先月末に2巻が発売されました)、これから彼がどう心の傷を癒やしてゆくのか、見守りたい気持ちになりました。
シリアスな内容(の中にも笑いもあります)ですが、暗い気持ちになることなく、反対に暖かくてちょっと切ない気持ちになれるいい物語です。



関連記事