詩集 エイプリル
詩集 エイプリル
著者 銀色夏生
出版社 角川書店
出版年月 2008年6月
ISBN 978-4-04-167368-3
税込価格 580円
分類 文庫/日本文学
「励ます」
励ますってなんだろう
手を引いてどこかへ連れて行くことはできない
人は人を触ってはいけない
手を引いてついて来させることは
その人をますます弱くしてしまう
ひとりで歩けるように
離れて元気づけることだ
いちばん悲しい時に 強く抱きしめたあと
すぐに離れて待つことだ
できるのは
絶対に出口があるよと教えること
出口がないなんてことはないと
はったりでもいいから言い切ること
そして見守ること
信じると伝えること
(詩集 エイプリルより引用)
銀色夏生さんの詩は、物事をちょっと離れて見ているような、冷静で淡々としているところが魅力的だといつも感じます。
特に何も誇張していない、無駄な装飾もしていない、わかりにくい比喩もない、だから心にすとんと収まるものがなにかあるのでしょう。
冒頭にあげた詩は、あらゆる人間関係において当てはまる気がします。
一から十までを手助けしてあげていたら、もしくは、スタートからゴールまでのレールを引いてあげていたら、その人間関係は依存の関係になってしまうように私は思います。
その人の立ち上がろうとする力、前に進もうとする力、這い上がる際のもがく力、そういったものを奪いかねません。
優しさとはなんだろうか、と以前よく考えていて、まだ答えははっきりとは出ていませんが、何でもしてあげることは優しさではないとなんとなく漠然と思っています。
それは優しさではなく、何かをしてあげたということによって得られる優越感の一種ではないでしょうか。
だとしたらひどく傲慢で、当人は優しいことをしたのだと勘違いしているのだから同じこと繰り返すでしょう。
次第にこんなにしてあげているのに、と怒り出すかもしれません。
現在の社会にはこんな歪んだ優しさや愛情がそこら中にありふれているように思います。
大切な人であればあるほど、どうにかしてあげたいと思うかもしれません。
手を貸すのは簡単なことだし、優越感も得られます。
でもどうにかするのは本人です。
私たちはただ信じて見守るしかありません。
このつらいことにも出口はあるんだと力強く言い、信じて見守るだけです。
つらいことや苦しいことと闘って、這い上がってきた人は大きく成長できます。
もし、あなたも大切な人が何かに躓いていたら、信じて静かに見守りましょう。
それが大切な人へ出来る唯一の手助けです。
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