気になる新刊2点
熊本ゆかりの作家お2人の新刊がほとんど同時に発売となりました。
人や、人でないものたちが、自らの輪郭をめまぐるしく変化させながら、動いて、蠢いて、飛び跳ねて…矢鱈と騒々しい。なのにまるで、中原中也の「一つのメルヘン」のように、ひと気のない静謐な世界が同時に立ち上がってくる、ハイコントラストな、言葉の獣道。昨年刊行された『現実宿り』からわずか4か月、早くも誕生した新たな怪作です。
けものになること/坂口恭平/河出書房新社/1836円(税込)
実際に切腹を見たことがあるという凄まじいエピソードから始まる新作『切腹考』。それはもう身の毛もよだつ強烈な描写です。そこから、伊藤比呂美さんが惚れ抜いている森鷗外の文へと深く降りていきます。おととし文芸誌「文學界」で連載がスタートし、旦那様の死や、熊本地震を挟んで書き継がれた、無常の世を切り開く力強い文学が新たに生まれました。
切腹考/伊藤比呂美/文藝春秋/1836円(税込)