毎年恒例!文庫フェア「チチカカコヘ 教養は楽しい!」スタートしてます

ながしょ

2017年01月26日 14:35


「チチカカコへ」とは……学術系の文庫レーベルを擁する中央公論新社、筑摩書房、KADOKAWA、河出書房新社、講談社、平凡社の6社の頭文字を取り、南米にあるチチカカ湖に掛けて名付けられた文庫フェア。

今回は各社特に1点ずつ選んだミニフェア「日本を読む」が含まれていますので、そちら6点をご紹介いたします。推薦文は、無料配布しているフェア小冊子より。他にも色んな本がありますのでぜひお越しくださいませ!
まるで魑魅魍魎の妖怪世界!
異形の文字たちを、これでもかと
牛丼の野家の「」は上の士がだし、デパートの髙島屋の「髙」は「梯子高」という縦棒が梯子につながったものだし、「冨」、「﨑」など、異字体は私たちの周りに数知れず存在する。人名だけでなく、花と華、龍と竜などもそうだ。本書では、日本の正字がいかに生まれ、それによって旧字や俗字や略字がどのように選別されたかを解説、それでもこぼれ落ちていく異形の漢字たちを、豊富な実例で紹介する。
異字体の世界 最新版 旧字・俗字・略字の漢字百科/小池和夫/河出文庫/821円(税込)


『風土』の学者は桂離宮をどう見たか
渡辺義雄の写真とともに味わいたい
京都にある桂離宮は、江戸時代に後陽成天皇の弟・八条宮によって造られ、「日本庭園として最高の名園」といわれる。この建築と庭園の美に『風土』の和辻哲郎が挑んだ知られざる傑作。和辻は、同時代の絢爛豪華な日光廟と対極にある簡素な様式に注目して、その背後にある者を丹念に探っていく。流麗な文章と日本写真界の巨匠・渡辺義雄による写真を味わいつつ、豊かな知識と繊細な感性が捉えた美の世界を堪能したい。
桂離宮 様式の背後を探る/和辻哲郎/中公文庫/700円(税込)



高度成長直前の日本全国を、
稀代の芸術家とともに歩き直そう
「芸術は爆発だ!」の岡本太郎は情熱的な旅人でもあった。昭和三十年代、彼は新たな創作の源を求めて全国を歩きまわる。たとえば大阪。「非芸術的」な空気に溜息しつつも、商人のエネルギーと都市の混沌にどこか心惹かれている。奇しくもこの旅は「太陽の塔」構想のちょうど十年前のこと。同時にそれは、五輪や万博によって日本が大きな変貌を遂げつつある時代でもある。紀行写真満載で、日本を見つめ直すきっかけとなる一冊。
日本再発見 芸術風土記/岡本太郎/角川ソフィア文庫/1080円(税込)




東京から北海道へ
克明に描かれた文明開化期の日本
数あるバードの旅行記で、日本で最初に翻訳されたのが本書(初版は東洋文庫、一九七三年)。浩瀚な原典をバード自身が大幅に短縮・編集したダイジェスト版を底本とする本書は、バードの世界への入り口として手頃な一冊。東京から北海道まで、生き生きと綴られた明治日本の姿をさらに知るには、詳細な訳注を付した原典の全訳、『完訳日本奥地紀行』(金坂清則訳注、全四巻、東洋文庫)をどうぞ。
日本奥地紀行/イザベラ・バード/高梨健吉・訳/平凡社ライブラリー/1620円(税込)


に託された
もう一つの日本という物語
歴史というのは事実の集積であるはずなのに、いつのまにか物語めいてくるものである。中世の日本もその一つで、「農村を中心とした均質な社会だった」「孤立した島国だった」などというのも物語(イメージ)にすぎない、と網野はそれに異論を呈した。著者が亡くなって一二年。現実の世界が変わっていく中にあって、この歴史学者が見せてくれた「日本のもう一つの姿」という物語を、われわれはどう読み直していけるだろうか。
日本の歴史をよみなおす(全)/網野善彦/ちくま学芸文庫/1296円(税込)


若き日のキーンさんが見つめた日本
半世紀変わらない「美しさ」を求めて
日本文化への造詣が深く、優しく厳しく、愛情にあふれた目線で日本に接するキーンさんのお人柄は多くの人を魅了しています。そのキーンさんが一九五八年、アメリカの出版社に依頼された一般読者向けの日本論が本書のベースです。歳月が流れ、日本も世界も変わりました。古くなったものもあれど、変わらないものもあります。それこそが、「果てしなく美しい」日本。若き日のキーンさんと、日本の、日本人の姿を探しに出かけましょう!
果てしなく美しい日本/ドナルド・キーン/足立康・訳/講談社学術文庫/1188円(税込)

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